石の美術館

石の触覚的な可能性~「石の美術館」を通して

米を貯蔵していた80年前の古い3棟の石造の蔵を再利用して、芦野石(安山岩)という地元の石を素材にした展示空間として再生されています。隈さんは「組積造を使って曖味で軽やかな空間ができないかという挑戦をしてみました。」と言われるように、芦野石を50mm×120mmに薄く切って、鉄骨を抱かせた石の柱に切り込みを入れ、石のルーバーをつくっています。その石のルーバーから光や風が抜け、保存された石蔵が向こうに見通せます。

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また別の壁では、分厚い壁厚の無筋の組積造が透かし積みで穴を多く開けることで軽やかな印象になっています。石の目地の取り方も縦は石を突き付け、横目地のみの目地とすることで、目地によって石単体が強調されるのを避け、全体から見ると石のルーバーと同様に石の水平ボーダーが、石の軽やかさを引き立てるように軽やかなディテールが施されています。

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さらには、一部の壁には光が透ける薄い大理石(ビアンコカラーラ)をはめ込んで、室内がその石を透かした光で満たされるような状態にしています。

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これらのディテールは、とても重たい石という素材の印象を視覚的に軽やかな印象に変えることで、石という素材の新しい可能性が実現されています。また、3つの石蔵の中間スペースを新たな展示空間の増築や緑を植えた大地にするのではなく、水盤を張り、揺れる水面に石蔵を映し出そうとしたのも、この軽やかな印象をつくり出すための視覚的効果を狙ったことでしょう。
水盤を歩き回る秀逸な展示ルートの構成は、シークエンスの流れの中での建築体験を重視してのことのようです。
しかし、私が感じたのは各石蔵の展示空間が、冬でもとても寒いということ。実際に芦野石を触るととても冷たい。本来の石藏は、温度・湿度の変化が少ないことが、米倉としての機能を担っていたはずです。地元の芦野石を扱う石材会社の依頼による石の美術館であったため、残っていた石藏と同じ軽石凝灰岩の大谷石ではなく、芦野石はおのずと素材になったことだと思います。

調べると芦野石の熱伝導率は、1.5kcal/m・h・℃で、ほぼコンクリートと同等の値となっています。これに対して、シラスは0.3kcal/m・h・℃と木材とほぼ同等の値で、芦野石やコンクリートの約1/5です。表にある他の石と比べてもシラスが断熱性能のとても高い石だということが分かります。

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視覚的に石という素材の可能性を追求された石の美術館に対して、私は、触覚的に、体感的に石という素材の可能性を追求したいと思っています。石の美術館は、文字通り美術館という機能があってのことですので、石を体で感じる必要には迫られません。しかし、住宅では視覚的にだけでなく、体感的にも快適な環境をつくる必要があります。そのため石という一般に熱伝導の高い石を住宅などの快適温度を保つ必要のある用途では使用しにくくなります。上の比較でも分かるように、シラスは他の石にはない高い断熱性能をもつため、石を温熱環境を調整する素材として利用が可能です。そこにこれまでにはない石という素材の新しい可能性や、素材を通した環境づくりの可能性があるのではないかと考え、研究と実践を続けています。


DSC_4262分厚い組積壁からのぞく

DSC_4154芦野石のドアノブは印象は素敵だが、冬はとても冷たく触れたくなくなる

DSC_4276同じ石でも高温で焼くと色が変わるのは面白い

石の美術館保存利用されている大谷石の石藏は比較的寒さは感じない


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